ホームページ作成・WEBサイト作成業務とSEOホームページやウェブサイト作成を業者に委託する際に、業者側が請け負うホームページ作成業務の範囲・業者の義務の範囲がどこまでか、が当事者間で問題になることがあります。

たとえば、次のような点です。
・ドメインの取得やサーバーとの契約(代行)は業者側の業務なのか
・サーバーにアップするだけでなく、ホームページ制作にあたって作成した新たなソースをデータとして依頼者側に渡す必要があるのか
・サーバーアップ後の軽微なデザイン変更や仕様の変更につき、業者がこれに応じなければならないか

こうした受託業者の業務内容を巡る問題の一つに、ホームページ・WEBサイト制作を請け負った業者がSEO(特に内部SEO)まで行わなければならないか、という問題があります。

基本的には契約内容によって決まる

上記の様な依頼者とホームページ・ウェブサイト制作業者の問題は、当事者間の合意内容の問題です。

そのため、業者の業務範囲・義務の内容は、依頼者と業者との間の契約書にどのように書かれているかによって、大部分はクリアにすることができます。

しかし、その反面、当該契約書の記載があいまいだったり、十分な記載がなかったりすると、依頼者と業者との間で認識に齟齬が生じ、トラブルに発展するケースがあります。

ホームページ制作を依頼する側が、ホームページの作成を委託した経験がない、あるいは乏しい場合、業者側が当然の前提と考えている事であっても、共通認識をもてていないことが少なくありません。

SEOもその一つです。

業者側は、SEOとホームページ作成は当然別物と考えているのに対して、ホームページ・ウェブサイトの作成を依頼する側は、高い費用を払ってホームページの作成を依頼するのだから、それなりの順位で表示させてもらえるはず、との期待をしているケースでは、SEOに対して、依頼者側と受託業者側とで共通認識が不足しているといえそうです。

ホームページ作成とSEOは別物か

ここで、ホームページ作成とSEOに関して、興味深い裁判例を紹介します。東京地方裁判所平成26年9月11日判決です。

この判決は、SEOにつき契約書上明確な定めがない事案において、ホームページ作成と内部SEOにつき、次のように述べ、内部SEOを施すことも業者の業務に含まれるとの内容の判断をしています。ホームページ作成と内部SEOとを別物ではなく、一体的な業務と見ているとも評価できます。

東京地方裁判所平成26年9月11日判決(判旨の一部)
通常のサイト制作においては、ユーザーが検索すると考えられる目的キーワードを設定し、キーワードに沿ったページ構成と内容で作成するなどして、集客効果を上げるための対策(内部SEO対策)を採っている。一般に内部SEO対策の費用はサイト制作費用に含まれる。

この点、上記判旨のうち「通常のサイト制作においては・・・(内部SEO対策)を取っている」との表現や「内部SEO対策の費用はサイト制作費用に含まれる」との判断部分は、正直、ここまで言い切ってよいのか疑問がないわけではありません。

上記の裁判例の事案では、問題となったサイトが「医療情報に関するポータルサイトとして制作されたものであり、月間50万件のアクセス数を目標として掲げていた」ことが特殊事情として存在し、当該事情が、受託業者側に内部SEOを施すべき義務を課す実質的な理由となった可能性があります。

しかし、上記判断部分がこの特殊事情と直接関係のない一般論的な判示の仕方であることに鑑みると、依頼者側からしても、受託業者側からしても、上記の様な判示をした裁判例があることに留意をしておいて損ありません。

SEOが契約書上謳われていなくても、受託業者側の仕事の一つと評価され得る一つの証左ではあります。

裁判例に反対する見解もあり得る

裁判例に反対する見解なお、上記裁判例の判断についてですが、次のような観点から、裁判例の見解に反対する考え方もありえるところです。

・受託業者側の仕事としては、依頼者側から提供されたコンテンツを依頼者の希望に沿って、デバイスに表示させることのほうが、内部SEO施策をするよりも優先される

・ホームページの制作とSEOとでは、必要とされる知識・技術が異なる

・内部SEOまで受託業者側の業務に含めると、内部SEOの多様さゆえに、業務範囲が不明瞭になる(受託業者側でどこまでやればよいのか、明確ではない)

私が確認したホームページ制作に関する法律問題を扱った書籍でも、ウェブサイト制作とSEOは別物と評価されており、上記裁判例の立場を無批判に首肯することはできないように思われます。

契約書による契約の明確化

最後に、ホームページ作成委託に際して、上記裁判例にあるように、内部SEOが業務の範囲内か否かが争いになるケースがあることを考えると、裁判例の見解の当否は別として、トラブル回避のための措置は検討しなければなりません、

端的には、ホームページの制作委託契約書において、内部SEOが業務の範囲内か否かを明確にしておくが重要になります。

また、内部SEOを業務範囲内とする場合でも、内部SEOの多様性に鑑みると、どういった施策を施せば、契約上の義務の履行を果たしたことになるのかを明らかにしておくほうがトラブルの予防に資すといえます。

トラブルが発生してしまっては、委託者側・受託業者側双方にとって紛争解決のための人的コストを含む種々のコストが必要になります。

契約内容について互いに共通認識を抱けるよう十分協議の上、契約書に受託業者が請け負う仕事の内容を明記することが肝要です。