連帯保証について企業や会社が信用取引(売掛金取引を含む)を行うに際して、債権回収の可能性を大きく左右するのが、担保の有無です。

もちろん、信用の高い企業や会社を相手にする売掛取引においては、担保は不要かもしれません。

しかし、新規で小さな取引先を相手とする場合や、継続的に取引をしてきた会社でも、売掛金の規模が大きくなってきた場合には、担保の提供を受けられないか検討が必要となります。

そして、担保には、大きく分けて人的担保と物的担保の二つが有ります。

物的担保の典型例は抵当権です。抵当権の仕組みは、抵当物件を引き当て財産とし、債務の履行されない場合に、当該物件を競売等に付して、債権の回収を図るという仕組みです。

一方、人的担保の典型例が「連帯保証」です。本記事では、この連帯保証について、債権者からみたメリットと弱点を紹介します。

人的担保 ―連帯保証―

連帯保証は保証の一種です。

連帯保証があると、おおざっぱですが、連帯保証人が、主たる債務者の債務と同等の債務を債権者に負うということになります。

たとえば、A社が取引先B社に有する売掛金債権1000万円について、Cの連帯保証を得た場合、A社は、1000万円をBに請求してもよいし、Cに請求してもよい、ということになります。

この時、Cは、Aに対して、「Bに財産が有るから、私には請求しないでほしい」、とか、「Bに先に請求してほしい」等の主張はできません。

連帯保証の対象となる主たる債務・連帯保証人資格

<連帯保証の対象となる主たる債務>
連帯保証の典型例は、金融機関が融資をする際に会社の代表取締役(社長)等から連帯保証をとるケースです。

経営者の皆様の中には、銀行から融資を得る際、連帯保証人となることを求められたという経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。

もっとも、当然のことですが、法律上、連帯保証を付すことができる債務は銀行融資の債務に限られていません。

たとえば、自社の取引先に対する売掛金債権(取引先から見た場合は買掛金債務)についても、連帯保証を付すことが可能です。

売買契約における売買代金や製造委託契約における請負代金等に相手方会社代表者などに連帯保証を求めるケースがその例です。

<連帯保証人となる資格>
また、連帯保証人となりうる者は「個人」に限られていません。連帯保証人は「個人」でもよければ「法人」でもよい、ということになります。

たとえば、AがBを主債務者とし、Cが連帯保証人となるケースにおいて、Cは個人でも良ければ法人でも良いということになります。

連帯保証のメリット

債権者から見た連帯保証のメリットは、売掛金債権等の回収可能性を挙げることができる点です。

連帯保証人の責任財産が引き当てになる

AがCから連帯保証を得た先の例では、連帯保証があることで、B社の財産だけでなく、Cの財産もAの債権回収の引き当てとなる責任財産となります。

Aは、Bの他、Cからの債権を回収できるチャンスがあるため、当該債権の回収可能性が高まるわけです。

適切な支払いへの動機づけにもなる

また、個人から連帯保証をとることは、主債務者をして、「確実に支払わなければ」と動機づける契機にもなります。

たとえば、Cから連帯保証をとることで、B社に、連帯保証人となったCに迷惑をかけることは避けたいという心理的プレッシャーが加わるからです。

債権者側から見れば、こうした間接的な動機づけを得られることも、連帯保証のメリットの一つです。

連帯保証は複数求めることができる。

連帯保証人の数に法律上制限はありません。

一つの債務につき、代表者代表取締役の他、その他の取締役に連帯保証人になってもらう、ということもあり得ます。

たとえば、左記のA社、B社の取引例では、個人たるCに連帯保証人になってもらう他、C以外のDに連帯保証人(合計2人)に連帯保証人になってもらうことが可能です。

もちろん、CやDの合意を得るのが前提ですが、もし二人から連帯保証を得れば、債権回収の可能性やB社の支払への動機づけはさらに厚くなります。

連帯保証契約の形式

連帯保証契約の形式<書面の作成>
いざ連帯保証を得ようとする場合、当該連帯保証契約は書面化しなければなりません。口頭、口約束ではダメ、ということです。

書面化する最も典型的な方法の一つは、通常の取引に係る契約書の他に、別途、連帯保証契約書を作成するという方法です。

書面化の方法のもう一つは、売買契約書等、主債務の発生原因となる契約書に連帯保証に関する必要な条項を予め定めておき、同契約書に買主の他、連帯保証人のサインをもらうという方法です。

いずれの場合においても、契約書の中に必要な条項を盛り込んでおく必要がありますので、具体的な契約書作成に際しては一度ご相談いただければと思います。

<連帯保証時の事情等も重要>
また、連帯保証契約は、後になって、勝手に主債務者が署名・捺印した、連帯保証契約をした覚えがない、などと争われることが多い類型の契約でもあります。

こうした争点が後になった生じた場合、連帯保証契約締結時及び契約後の事情・対応等により、有利な事実認定をえられるか否かが左右されます。

単に連帯保証契約書を作成しただけでは、十分なリスクヘッジになっていない場合がありますので、注意が必要です。

連帯保証の弱点・デメリット

連帯保証は、債権の回収可能性を上げる強力な手段の一つですが、弱点もあります。

それは、債権回収可能性の上昇の程度が、連帯保証人の資力に依存するという点です。

上記のとおり、連帯保証契約は、連帯保証人が、主たる債務者の債務と同等の債務を債権者に負うとの契約ですが、連帯保証人に資力がなければ、当該契約は絵に描いた餅となってしまいます。

特に、代表者が連帯保証するケースにおいては、取引先である会社とその代表者とが同時に信用不安に陥るということも少なくありません。

会社が傾いてリスクが顕在化した時には、代表者の資力もほとんどなくなっているということが往々にしてあるのです。

こうしたリスクを回避・軽減するためには、連帯保証と同時に物的担保を得られるか否かの検討や、当該取引先との取引額(与信額)の上限のコントロール等が必要となります。

与信管理の観点からは、連帯保証は債権回収の一手段にすぎないことに留意して、多面的・他覚的な与信管理を試行することが重要です。