契約書の作成について企業がビジネスを展開していくにあたって必ず作成する書類の一つが契約書です。

コンビニやスーパーで買い物をするような場合、あえて契約書を作る必要はありません。日本の法律では、原則として、口頭でも契約が成立すると理解されており、日常的な買い物で契約書の作成が求められることはありません。
    
しかし、企業が業務を第三者に委託したり、製造機械を購入したりする場合、多くのケースで契約書の作成が必要になります。

本来であれば、これらの契約も、口頭・口約束で契約が成立しますが、口約束では、安心した企業取引はとてもできません。
    

契約書作成の目的

契約書の作成目的には、大きく二つです。

・契約内容の証拠化・明確化
・リスクマネージメント

契約内容の証拠化・明確化

一つは、契約内容の証拠化・明確化です。口頭での契約では、後で、言った言わないの水掛け論となったり、契約の内容に疑義が生じます。

また、多数の従業員・経営者が関与する企業内では、契約を書面化し内容を明確にしておかなければ、企業としてどういった契約を締結したのか把握するのが困難となります。それでは安心して企業活動を行うことはできません。

こうした事態を避けるため、企業が重要な取引をするにあたっては、契約書を作成しておくことが必要になります。
 

裁判における証拠としての価値

契約書には、裁判における証拠としての価値があります。

契約内容に紛争が生じて裁判となった場合、裁判所は、当事者がどういった合意をしたかを認定するに際して、契約書を重要視します。

たとえば、実際には交渉の段階で協議の対象となっていなかったAという条項が実は契約書に盛り込まれており、後日、そのAという条項をめぐって裁判となったとします。

その場合、裁判で、Aという条項の合意を否定したい当事者が、「その条項については契約交渉の段階で協議していない、サインはしたが契約の内容になっているなんて知らなかった」というような主張をしたとしても、その主張がとおる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

契約書が一度作成されれば、裁判においては、多くの場合、当事者間の契約内容が契約書のとおり認定されます。

逆に、何も作成されていなければ、口約束での合意内容を立証するのはかなり難しくなります。

この意味において、契約書には、そこに記載されている内容が合意の内容であると証する強い証拠価値があります。裁判でこれを覆すのは一筋縄ではありません。

リスクマネージメント

契約書とリスクマネジメント契約書作成のもう一つの目的はリスクマネージメントです。

たとえば、ある契約の不履行により発生する損害賠償の額を予め限定する損害賠償の額に関する予約条項がリスクマネージメントに用いられる条項の一つです。

その他、相手の信用(財務)負担に不安があるため、相手方の代金の先払いを契約書に定める、というのもリスクマネージメントの一環です。

契約書に何も定めなければ、民法や商法など、法律に従った処理がされることとなりますが、法律は、必ずしも万全ではありません。

法律上の処理をされた場合に抱えることになるリスクをどのように分散・軽減するかを検討することが契約書作成に際しては重要になります。

参照:リーガルリスクマネジメントの意義

裁判の認定を見据えたマネジメント

上記のとおり、契約書には証拠価値があります。多くの場合裁判でも通用します。

そのため、契約書をきちんと作成しておくことで、裁判になったとしても、事前に計画したリスクの回避・分散・軽減を図ることができるのです。

反面、相手が作成し、相手から提示された契約書は、多くの場合、各種条項が相手有利に記載されています。少なくとも、その前提で契約書の内容を検討しなければなりません。

相手が作成した契約書においては、契約上のリスクがこちら側に転嫁されており、しかも、裁判において、そのリスクが顕在化してしまうということが少なくないのです。

そのリスク転嫁が、当該契約によって得られる利益に比較して許容できるものか否か、取引に際しては十分な検討が必要になります。

契約書作成と力関係

そうはいっても、契約書をどのように作成するかは、当事者間の力関係にも依存します。

圧倒的に強い立場に立つ発注主に対して、契約書の書式や内容の変更を申し出るのはなかなかに難しいものです。

契約書の変更等とても申し入れられない、と言った場合には、当該契約によって生じたリスクを賠償保険等で軽減できないかなど、その他のリスクマネージメントの方法を検討しなければなりません。

また、どうしても負いきれないリスクを負わされている、しかもそのリスク転嫁にかかる条項が変更できないということになれば、経営判断として取引を継続するか否か自体も検討の対象としなければなりません。

一方で、自社が契約書作成のイニシアティブをとれるケースでは、当該契約において生じうるリスクを回避・分散・軽減しうる契約書を作成しましょう。

そのひと手間の積み重ねが、タフな経営を生み出します。

契約書作成のご相談

契約書作成についてのご相談契約書作成には、法律上の知識や知見が必要です。

証拠化の観点からは、疑義のない文言にて契約書を作成する必要が生じます。

また、リスクマネージメントの観点からは、当該契約によって生じうる法的リスクの洗い出し、分析をした上でそのリスクを回避・分散・軽減する条項を設けることが必要となります。

こうした契約書の作成に際しては、法律上の知見が不可欠です。ぜひ一度、弁護士にご相談ください。