手形・小切手を巡るトラブル手形や小切手は、企業間取引において、今なお重要な役割を担っています。

金融機関等を介した決済手段が多様化した現在においても、手形や小切手が現金取引の代替手段や信用の手段として利用されることは少なくありません。

これは、一般に手形が企業間取引において、次のような機能を有していると言われるためです。

<手形の機能>
・現金支払の代替的機能
・信用担保としての機能
・送金の手段としての機能

手形・小切手の法的特徴

手形・小切手は、種々の特徴をもつ有価証券です。

法は、手形・小切手を使用した取引の安全性を十分に担保して、手形・小切手の流通・迅速な決済を可能とするために、手形・小切手に次のような特徴を与えています。

(設権証券性)
まず、手形・小切手は、一度振り出されると、当該手形や小切手に表示された内容の債権が発生します。

すなわち、振出と言う設定行為により、権利義務関係が発生するのです。これを設権証券性といいます。

(文言証券性)
そして、手形・小切手上の権利の内容は、証券の記載内容によって定まります。この性質を文言証券性といいます。

(要式証券性)
また、手形・小切手に記載すべき事項は、法律で厳格に定められています。このことを要式証券性といいます。

(無因証券性)
さらに、手形や小切手は、一度振り出されると、手形や小切手に表示された債権は、手形・小切手を振り出す原因となった取引とは切り離された別個の権利と把握されます。

これを手形・小切手の無因性、あるいは無因証券性といいます。

手形・小切手訴訟

手形・小切手訴訟手形・小切手には、訴訟法上も、簡易・迅速な解決を図るための特別な手当てが準備されています。

すなわち、手形・小切手を請求する手形・小切手訴訟の審理は、原則として、1期日で行われます。

また、当該訴訟において証拠となるのは、原則として書証のみとされています

さらに、手形小切手訴訟において、その請求を認容する場合の手形・小切手判決には,職権で必ず仮執行の宣言が付されます

このように、手形・小切手については、紛争の迅速解決を図るため、特別の手続きが準備されています(詳細についてはご相談ください。)。

なお、上記のように手形・小切手金の請求に際して、所持人は、特別の手続きを選択できるものの、他方で、手形・小切手金を請求するに際して、手形所持人は、通常の訴訟手続きを選択することも可能です。

紛争の性質・争点・証拠関係等に照らして、請求する側が、手形・小切手訴訟を行うか通常の民事訴訟を行うかを選択することになります。

手形・小切手を巡る種々の紛争

手形小切手を巡っては、種々の紛争が発生し得ます。

<原因関係を巡るトラブル>
たとえば、AB間の売買契約において、買主であったBがAに手形を振り出したところ、AB間の契約が後日解除されたというケースです。

解除に応じて、Aが手形を返還すれば問題がありませんが、手形決済後に契約が解除されたような場合や、Aが手形を第三者に流通させてしまっていたような場合等に問題が紛糾しがちです。

<融通手形を巡るトラブル>
また、手形が、融通目的で振り出さされた融通手形であったところ、手形交付の相手(被融通者)から、資金の支払いがなされない(返済がなされない)、といったケースもあります。

<手形の偽造を巡るトラブル>
その他、教科書事例ではありますが、手形が偽造されたようなケースも問題となります。

たとえば、A者の経理を担当していた従業員が、実際には手形作成につき、何らの権限も与えられていないのに、あたかも手形を作成する権限があるかのように装い、手形を作成するといったケースです。

<裏書譲渡を巡るトラブル>
以上の他にも、手形の裏書譲渡に関し、裏書譲渡の原因関係や裏書の連続性の有無等を巡ってトラブルが生じることもありえます。

手形・小切手を巡るトラブルは弁護士にご相談を

上記のように、手形を巡るトラブルは多種多様です。また、手形・小切手トラブルは、その性質上、短期・迅速の解決必要とされることが少なくありません。

上記のような各トラブルを迅速かつ適正に解決するためには、手形・小切手に関する法的知識が必要不可欠です。

手形・小切手を巡るトラブルに直面された場合には、是非一度、ひびき法律事務所(北九州)の弁護士にご相談ください。