建物・建築工事の請負代金請求戸建新築建物、マンション、あるいは商業施設や工場施設等、いずれを問わず、建物を建築する場合、業者にその建築・施工を依頼するのが一般です。リフォーム工事や建物撤去工事、内装のみ、外装のみの工事を行う場合も同様です。

この場合、建物建築等の工事を希望する施主と、建築工事等を実際に請け負う建築業者・施工業者(工務店等)との間では、仕事の完成を目的とする請負契約が締結されます。

この請負契約に基づいて、施主が業者に支払う義務を負うのが請負代金です。

参照:建築・リフォーム工事代金・請負代金請求 ex北九州

請負代金金額が確定していない場合

請負代金の金額については、請負契約にて工事の内容、代金の金額が具体的に定まっており、請負契約の内容通りの施工がなされて建物が完成する限り、トラブルに発展することは多くありません。

ただ、建物建築工事においては、そもそも、契約段階で、請負金額の金額が確定的に決まっていないというケースが少なくありません。

例えば、建物の建築工事等につき請負契約が締結される場合に、契約時点において請負契約の工事の内容(建物の内容や仕様)が画一的に定まっていないといった事情から、請負代金の金額に具体的な合意があるとはいえないケースが存在します。

または、取り急ぎ契約の成立を優先させたい、工事を急ぎたいといった事情から、請負契約時点において、明確な請負代金が決まっておらず、その概算しか決まっていない、ということも多々あります。

こうしたケースにおいては、請負代金の額をめぐって、施主と業者間にトラブル・紛争が生じる可能性が高くなります。

請負代金を支払う義務の存否

請負代金の金額が定まっていないからといって、そのことをもって、施主が、請負代金を支払わなくてよいという結論にはなりません。

金額が確定していなくても、当該工事につき、相応の対価を支払うとの合意(有償合意)が存在することを施工業者が証明できれば、施主は、請負代金を支払わなければなりません。

<有償合意に関する証明について>
※ 建物工事を業者依頼する場合、施主と施工業者間において、当該工事につき有償合意が存在するのが通常です。

その金額の多寡に争いがあるとしても、工事代金自体は支払うとの意思のもとで、施主は工事を依頼していると考えられます。したがって、有償合意とすること自体に争いがないケースも少なくありません。

また裁判上、有償か無償かで争いがあるケースにおいても、施主が発注し、業者が建築工事を請け負っている以上、施主側が、「当該工事が無償である」ことを根拠づける具体的な主張・立証を行わない限り、ほとんどのケースで、有業合意があるものとの判断がされます。

なお、「当該工事が無償である」場合というのは、たとえば、新築工事に付随して追加工事が行われたケースにおいて、施工業者が追加工事をサービス工事(無償工事)とするといったケースです。

追加工事が有償か無償かがあいまいなまま施工されてしまい、同追加工事の報酬請求権の有無が争われる場合、この有償合意の存否が、施主と施工業者間において、重要な争点となります。


請負代金

請負代金施主が請負代金を支払わなければならないとして、次に問題となるのは、請負代金の金額が明確に定まっていないケースで、請負代金の金額がいくらになるのかという点です。

抽象的にいえば、施主は当該建物工事の対価相当額を払わなければならないと解されています。

この相当額と言うのは、おおざっぱに言えば、当該工事を行うのに通常必要となる対価です(但し、通常必要な対価というのは、業者の規模・ブランド、地域等に応じた幅のある概念です。)

そして、訴訟になると、この相当額がいくらかという点をめぐり、施主・施工業者間において、意見が鋭く対立します。

<相当額を巡る主張>
(1)施工業者
相当額を巡っては、まず施工業者が、自社が主張する金額が相当であることを基礎づける具体的な事実を主張・立証しなければなりません。

具体的には、建物完成に必要な施工数量・施工単価により積算する方法又は現に支出した実費等を積み上げる方法により、相当額を主張することになります。

その他、当該工事建築に関し、他社が作成した見積書等も参考とされます。

(2)施主側
これ対して、施主側において、施工業者主張の金額が高すぎると主張したい場合には、施主側において、施工業者が主張する積算内容等が、不合理であることを具体的に指摘することが重要です。

その他、多少この記事のテーマからは離れますが、施主側としては、請負代金の相当額に関する主張の他に、
・工事に瑕疵がある場合に瑕疵修補に代えた損害賠償請求権が存する、
・一定の値引き合意が有った(通常の価格よりも安く請け負うとの合意が有った)
などの主張をすることも考えられます。



請負代金の額をめぐる訴訟においては、このような両者の主張・立証を介して、裁判所の心証が形成されます。

そのため、施主にとっても、施工業者にとっても、施工内容・数量・適正な積算単価等をいかに具体的に主張・立証できるかが、双方の勝敗を分ける肝になります。

そして、裁判等の手続において、こうした主張・立証を適切に行うためには、専門的知見を有する弁護士の支援を得ることが重要です。

請負代金額を巡るトラブルに遭われた場合には、一度弁護士に相談することを検討してみてください。